藤圭子っていう人は
人並み外れた才能と唖然とするような凡庸さと
仏のような慈愛と捨鉢な人生観と
けがれを知らぬ心と身も蓋もない俗物根性が
薄紙一枚隔てて隣り合わせに共存する女です
嘘がつけない女
自分を何か違ったものに見せることができない女
聖と俗の両極端に針が振れ切った女
こんなに人間的なやつを愛さずにいられましょうか
どんな称賛の言葉を聞いてもあたしは驚きません
圭子はそれに値する女だからです
そしてどんな非難や罵倒の言葉にもあたしは驚きません
そんなことはとっくの昔にあたしが自分の口で言ってるからです
隅から隅まで嫌いで腹の立つことばっかりで
それらすべてが大好きで愛おしい
圭子というのはそういう女です